建設業の45時間残業上限：その影響と対策を徹底解説

近年、働き方改革が叫ばれる中で、建設業界においても「45時間残業上限」が大きな話題となっています。これは、単に労働時間を制限するだけにとどまらず、企業の経営戦略、そしてそこで働く社員一人ひとりの働き方にも大きな影響を与える可能性を秘めています。

本記事では、中小規模の建設業者様に向けて、45時間残業上限の基礎知識から、それがもたらす影響、そして具体的な対策まで、わかりやすく解説いたします。この課題と向き合い、企業としての成長、そして社員の方々のワークライフバランスの実現に向けて、共に歩みを進めていきましょう。

45時間残業上限とは？建設業への影響は？

2019年4月に施行された「働き方改革関連法」。これは、長時間労働の是正、多様な働き方の実現などを目的とした、日本の労働環境に変革をもたらすための法律です。この法律の中で、特に注目されているのが「時間外労働の上限規制」です。簡単に言えば、残業時間の上限を法律で定めることで、長時間労働を抑制しようという試みです。

そして、この時間外労働の上限規制は、原則として「月45時間、年360時間」と定められています。これは、建設業などの特定の業種にも適用されます。つまり、建設業においても、原則として45時間以上の残業をさせることは違法となります。

しかし、建設業には、天候に左右される工事の特性上、突発的な作業が発生したり、工期に追われて長時間労働が発生しやすいという側面があります。そのため、建設業には、他の業種とは異なる特別な取り決めが設けられています。

それが、「建設業における時間外労働の上限規制の猶予」です。これは、建設業に対して、時間外労働の上限規制の適用を5年間猶予するというものです。ただし、猶予期間中であっても、時間外労働時間については、労使協定を締結し、「年間720時間以内」「月平均80時間以内」などの上限を守る必要があります。さらに、休日労働を含めた労働時間の上限は、月160時間、年間1,000時間以内と定められており、この上限を超えて労働させることはできません。

猶予期間後、建設業は2024年4月以降、原則として他の業種と同じく、月45時間、年360時間の上限規制の対象となります。しかし、建設業の特性を踏まえ、繁忙期などには、特別な事情がある場合に限り、労使協定を締結することで、年720時間まで残業時間を延長することが認められています。

45時間残業上限がもたらす影響とは？

45時間残業上限は、建設業界に大きな変化をもたらすと予想されます。まず、人材不足が深刻化する可能性があります。これまで長時間労働に頼っていた企業は、労働時間の短縮によって、人手不足に陥る可能性があります。また、人材確保の競争が激化し、人件費の高騰にもつながる可能性も考えられます。

さらに、労働時間の短縮によって、工期の遅延や、工事の品質低下などのリスクも懸念されます。これまでと同じように工事を進めるためには、生産性の向上や、業務効率化が急務となります。しかし、短期間で生産性を向上させることは容易ではなく、企業努力だけでは限界があるのも事実です。

45時間残業上限への対策：中小建設業が生き残るために

厳しい状況ではありますが、45時間残業上限は、企業にとって、働き方改革を推進し、生産性を向上させるチャンスと捉えることもできます。ここからは、中小建設業が生き残るための具体的な対策について考えていきましょう。

1. 生産性向上のための取り組み

限られた時間で成果を上げるためには、生産性向上は不可欠です。まずは、業務の無駄を洗い出し、効率化を図りましょう。例えば、ICTを活用した施工管理システムの導入や、3Dモデリングによる設計の効率化、現場作業の標準化などが考えられます。また、最新技術の導入による省力化も有効です。

2. 人材確保・育成

人材不足に対応するためには、若年層の入職促進や、女性が働きやすい環境づくりなど、人材確保の取り組みが重要です。また、社員のスキルアップを支援し、多能工化を進めることで、人材不足の解消を目指しましょう。魅力的な職場環境づくりも重要です。賃金の見直しや、休暇取得の推奨など、働きがいのある環境を整えることで、社員の定着率向上を目指しましょう。

3. 協力体制の構築

45時間残業上限に対応するためには、社内だけでなく、協力会社との連携強化も重要となります。協力会社と情報を共有し、工程管理を徹底することで、突発的な残業を減らすことができます。また、協力会社との間で、労働時間の平準化に取り組むことも有効です。

まとめ：未来を見据えた変革を

45時間残業上限は、建設業界にとって大きな試練となりますが、乗り越えられないものではありません。未来を見据え、働き方改革、生産性向上に取り組むことで、企業としての成長、そしてそこで働く社員一人ひとりのワークライフバランスの実現が可能となります。本記事が、そのための第一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。