【建設業向け】代価表の作り方を5ステップで徹底解説!精度を高めるコツも公開

【建設業向け】代価表の作り方を5ステップで徹底解説!精度を高めるコツも公開

日々の業務、本当にお疲れ様です。中小規模の建設業を営む経営者や現場監督、事務担当者の皆様にとって、「見積もり」は会社の生命線を握る重要な業務の一つではないでしょうか。特に、その根幹をなす「代価表」の作り方は、利益を確保し、会社の信頼を築く上で避けては通れない、まさに羅針盤とも言える存在です。

しかし、現実には「代価表の作り方がよくわからない」「いつもどんぶり勘定になってしまう」「作成に時間がかかりすぎる」といった悩みを抱えている方も少なくないはずです。それはまるで、航海図を持たずに荒波に乗り出すようなもの。どこに暗礁が隠れているか、どこに進めば宝島があるのか、全く見当がつきません。

この記事では、そんな皆様の悩みを解決すべく、建設業における代価表の作り方を、基礎の基礎から実践的なテクニックまで、余すところなく徹底的に解説していきます。この記事を最後までお読みいただければ、以下のことが明確になります。

この記事で得られること

  • 代価表がなぜ重要なのか、その本質的な役割が理解できる
  • 具体的な代価表の作り方が5つのステップでマスターできる
  • 材料費・労務費・機械経費の正確な積算方法がわかる
  • 作成した代価表の精度をさらに高めるプロのコツが手に入る
  • エクセルやソフトを活用した効率的な作成方法のヒントが得られる

もう、根拠の曖昧な見積もりで不安になる必要はありません。正確で説得力のある代価表は、貴社の利益を守り、発注者からの信頼を勝ち取るための最強の武器となります。さあ、私たちと一緒に、精度の高い代価表作成という航海術を身につけ、安定経営という宝島を目指しましょう。

1. 代価表とは何か? – 見積もりの心臓部を理解する

「代価表の作り方」を学ぶ前に、まずは「代価表とは何か」を正確に理解しておく必要があります。なんとなく「単価の根拠を示すもの」と捉えている方も多いかもしれませんが、その役割はもっと深く、重要です。

1-1. 代価表・内訳書・見積書の関係性

建設工事の見積もりに関する書類には、主に「見積書」「内訳書」「代価表」の3つがあります。これらは、それぞれ役割が異なり、以下のような階層構造になっています。

見積書 (総括)

工事全体の総額を示す書類。いわば本の「表紙」です。

内訳書 (明細)

見積書の総額が、どのような工種で構成されているかを示す書類。「目次」にあたります。

代価表 (単価の根拠)

内訳書の各工種の単価が、どのように算出されたかを示す詳細な書類。「各章の詳細な内容」です。

例えば、内訳書に「コンクリート打設工事 1㎥あたり 20,000円」と記載があったとします。この「20,000円」という単価が、どのような材料(セメント、砂、砂利)、どのような人件費(作業員)、どのような機械(ポンプ車)から成り立っているのかを詳細に記したものが代価表なのです。

1-2. なぜ代価表が重要なのか?

代価表は、単に単価の根拠を示すだけの書類ではありません。それは、プロジェクトの利益をコントロールし、会社の経営を安定させるための、まさに「心臓部」と言える存在です。

利益の源泉を可視化する「レシピ」

代価表は、工事という料理を作るための「レシピ」に例えられます。どの材料(材料費)をどれだけ使い、どんな職人(労務費)がどれくらいの時間で調理し、どんな調理器具(機械経費)を使うのか。これらを細かく記載することで、初めて「一皿(1単位の工事)」の原価が正確にわかります。この原価が分からなければ、適切な価格設定、つまり利益を上乗せした見積もり金額を算出することは不可能です。どんぶり勘定とは、レシピなしで感覚だけで料理をするようなもの。味が濃くなったり薄くなったり、つまり赤字になったり黒字になったり、結果が安定しないのです。

発注者への説得力を生む「根拠」

特に公共工事や、コンプライアンスを重視する民間企業との取引において、見積もりの透明性は非常に重要視されます。「なぜこの金額になるのか」という問いに対し、詳細な代価表を提示することで、価格の妥当性を論理的に説明できます。これは、発注者からの信頼獲得に直結し、価格交渉の際にも有利に働く強力な武器となります。

VE/CD提案の基礎となる「設計図」

VE(Value Engineering)やCD(Cost Down)提案を行う際にも、代価表は不可欠です。どの部分にコストが多くかかっているのかが代価表を見れば一目瞭然であるため、「この材料を別のものに変えればコストを〇〇円削減できます」「この工法を採用すれば人件費を〇〇円削減できます」といった、具体的で説得力のある提案が可能になります。これは、他社との差別化を図り、受注を勝ち取るための重要な戦略となり得ます。

2. 代価表作成の前に準備すべきこと

優れた代価表は、優れた準備から生まれます。いきなりエクセルを開く前に、必要な情報を整理し、道具を揃えることが、効率的で精度の高い代価表作り方の第一歩です。

ここでは、代価表作成に必要な情報・資料と、使用するツールについて解説します。

2-1. 必要な情報・資料を揃える

以下の資料が手元にあるか確認しましょう。これらが揃っていなければ、正確な積算は不可能です。

📝準備リスト

  • 1設計図書(図面・仕様書)
    工事の全体像、使用材料、施工方法などが記載された最も基本的な資料です。隅々まで読み込み、内容を完全に理解することが重要です。
  • 2数量計算書
    設計図書から、各工種に必要な数量を拾い出した書類です。いわゆる「数量拾い」の結果。この数値が全ての計算の基礎となります。
  • 3最新の単価資料
    材料単価や労務単価、機械損料などが掲載された資料です。一般的には「建設物価」や「積算資料」といった月刊誌が用いられます。また、取引のある専門工事業者や資材業者から取得した見積書も重要な単価資料となります。
  • 4歩掛(ぶがかり)に関する資料
    歩掛とは、ある作業を単位量だけ行うために必要な作業手間(人数×時間)のことです。国土交通省が公表している「公共建築工事標準単価積算基準」や、自社で蓄積した過去の工事データなどがこれにあたります。
  • 5諸経費率のデータ
    現場管理費や一般管理費などの間接工事費を算出するための比率です。公共工事の場合は定められた率がありますが、民間工事の場合は自社の実績に基づいて設定する必要があります。

2-2. ツールを選定する(エクセル vs 積算ソフト)

代価表の作り方として、主に「エクセル」を使用する方法と、「専用の積算ソフト」を使用する方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の規模や案件の特性に合わせて選びましょう。

エクセル 積算ソフト
初期費用 ◎ 安価(Officeがあれば追加費用なし) △ 高価(数十万~数百万円)
月額費用 ◎ なし △ サポート料やアップデート費用がかかる場合がある
自由度 ◎ 非常に高い(自社独自のフォーマットを自由に作成可能) ○ ソフトの仕様に依存するが、カスタマイズ可能なものも多い
作業効率 △ 手入力が多く、ミスが発生しやすい。計算式の管理が煩雑。 ◎ 単価や歩掛データが内蔵されており、自動計算でスピーディー。
データ連携 △ 過去データの検索や流用がしにくい。 ◎ 過去案件の流用やデータ分析が容易。
法改正・単価改定対応 △ 全て手動で更新する必要がある。 ◎ アップデートで自動的に最新情報に更新される。

【結論】
小規模な工事が中心で、コストを抑えたい場合はエクセルから始めるのが現実的です。一方、公共工事の入札に参加する場合や、複数の案件を効率的に処理したい場合は、初期投資をしてでも積算ソフトを導入するメリットは非常に大きいと言えるでしょう。この記事では、最も基本的なエクセルでの代価表の作り方を念頭に置きながら、普遍的な手順を解説していきます。

3. 【実践編】代価表の作り方を5つのステップで徹底解説

お待たせしました。ここからが本題です。具体的な代価表の作り方を、5つのステップに分けて、誰にでもわかるように丁寧に解説していきます。以下のプロセスに沿って進めれば、あなたも精度の高い代価表を作成できるようになります。

Step 1
構成決定
Step 2
材料費積算
Step 3
労務費積算
Step 4
機械経費積算
Step 5
合計・諸経費

ステップ1: 工種の洗い出しとフォーマットの準備

まず、代価表を作成する対象の工種を明確にし、計算の「器」となるフォーマットを準備します。

1-1. 内訳書から工種を特定

作成済みの工事内訳書を確認し、今回代価表を作成する工種をリストアップします。例えば、「コンクリート工事」の中の「基礎コンクリート打設」や、「内装工事」の中の「LGS壁下地組立」といった単位です。

1-2. エクセルで基本フォーマットを作成

エクセルで代価表のテンプレートを作成しましょう。基本的な構成要素は以下の通りです。このフォーマットを一度作っておけば、今後の案件で使い回すことができ、大幅な時間短縮に繋がります。

【代価表フォーマットの基本項目】

  • 工事名・工種名・規格・単位・設計数量:どの工事の、どの部分の単価を算出しているのかを明記します。
  • 区分:項目が「材料費」「労務費」「機械経費」のどれに該当するのかを示します。
  • 名称:具体的な材料名(生コンクリート、鉄筋など)、職種名(普通作業員、型枠大工など)、機械名(バックホウ、クレーンなど)を記入します。
  • 単位:それぞれの名称に対応する単位(m3, kg, 人, 日, 台・日など)を記入します。
  • 数量:その工種の単位(例: コンクリート1m3)あたりに必要な数量を記入します。歩掛から算出する場合が多いです。
  • 単価:各項目の単位あたりの価格を記入します。
  • 金額数量 × 単価 で算出される金額です。
  • 合計:材料費、労務費、機械経費それぞれの小計と、それらを全て足した直接工事費の合計を算出します。

▼エクセルでの代価表作成例(コンクリート打設 1m3あたり)

区分 名称 規格 単位 数量 単価 金額 備考
材料費 生コンクリート 21-18-20N m3 1.030 15,000 15,450 ロス率3%考慮
小計 15,450
労務費 普通作業員 0.500 18,000 9,000 歩掛より
左官工 0.100 22,000 2,200 歩掛より
小計 11,200
機械経費 コンクリートポンプ車 3t 0.050 50,000 2,500 歩掛より
小計 2,500
直接工事費 合計 (1m3あたり) 29,150

ステップ2: 材料費の積算

工事を構成する「モノ」の費用を計算します。材料費は比較的イメージしやすいですが、いくつか注意点があります。

2-1. 必要材料のリストアップと単価調査

設計図書や仕様書を基に、その工種に必要な材料を全てリストアップします。次に、それらの単価を調査します。

  • 物価本(建設物価・積算資料):公共工事で標準的に使われる資料。市場価格の大きな流れを掴むのに役立ちます。
  • 業者からの見積書:最も確実な方法です。複数の仕入れ先から相見積もりを取り、最も条件の良い単価を採用します。特に専門的な材料や大量に仕入れる材料は必須です。
  • 過去の購入実績:自社の過去のデータも貴重な情報源となります。

2-2. 数量の算出とロス率の考慮

数量は、設計数量そのものではなく、「ロス率(割増率)」を考慮する必要があります。例えば、コンクリートは輸送中や打設時にロスが出ますし、鉄筋や木材は加工時に端材が出ます。このロスを考慮しないと、原価割れの原因となります。一般的なロス率は材料によって決まっていることが多いですが、自社の実績に基づいて設定するのが理想です。

金額 = 材料の正味数量 × (1 + ロス率) × 材料単価

上記の例では、コンクリート1m3あたり、3%のロスを見込んで1.030m3として計算しています。

ステップ3: 労務費の積算

工事を動かす「ヒト」の費用を計算します。ここが代価表作成の肝であり、最も難しい部分かもしれません。キーワードは「歩掛(ぶがかり)」です。

3-1. 歩掛(ぶがかり)を理解する

歩掛とは、「ある作業を1単位仕上げるために、どれくらいの職人が、どれくらいの時間(日数)必要か」を示した数値です。単位は「人(にん)」で表され、「1人(いちにん)」は「1人の職人が1日(8時間)働いた作業量」を意味します。

例えば、「コンクリート打設の歩掛が0.5人/m3」だとすれば、「コンクリートを1m3打設するのに、0.5人、つまり1人の職人が半日かかる」という意味になります。この歩掛が分かれば、労務費は簡単に計算できます。

労務費 = 歩掛 (人/単位) × 労務単価 (円/人)

3-2. 歩掛の調べ方

歩掛をどこで調べるかが問題となります。

  • 標準歩掛:国土交通省が毎年改定している「公共建築工事標準歩掛」が最も一般的です。公共工事の積算ではこの数値を用いることが義務付けられています。書籍やインターネットで閲覧可能です。
  • 自社の実績データ(実行歩掛):ここが企業の競争力の源泉です。過去の工事で、「実際にどれくらいの人数で、何日かかったか」をデータとして蓄積し、自社独自の「実行歩掛」を作成します。標準歩掛よりも効率的に作業できるノウハウがあれば、それはそのまま利益に繋がります。

3-3. 労務単価の決定

労務単価、つまり職人さん一人当たりの日当を決定します。

  • 公共工事設計労務単価:国土交通省などが毎年発表する、公共工事の積算に用いるための労務単価です。職種別、地域別に定められており、一つの目安となります。
  • 自社の支払賃金:実際に自社で雇用している従業員や、協力会社の職人に支払っている日当を基に算出します。社会保険料などの法定福利費も忘れずに上乗せする必要があります。

ステップ4: 機械経費の積算

工事で使用する「キカイ」の費用を計算します。重機や特殊な工具などがこれにあたります。

4-1. 使用機械のリストアップ

その工種で使用する建設機械(バックホウ、クレーン、ポンプ車など)をリストアップします。人力で施工するのか、機械を使うのかで労務費と機械経費のバランスは大きく変わります。

4-2. 機械損料(レンタル料)の算出

機械経費は、大きく分けて「機械損料」と「運転経費」から成ります。

  • 機械損料:機械の償却費や維持修理費など、機械を保有・使用することによる損耗分を費用として計上するものです。
    • レンタル機械の場合:レンタル会社からの見積もりやカタログに記載されているレンタル料金を基に算出します。
    • 自社保有機械の場合:国土交通省の「建設機械等損料算定表」などを参考に、自社で損料を計算します。
  • 運転経費:燃料、油脂類の費用や、運転手の労務費が含まれます。(※運転手の労務費は労務費に含めて計上する場合もあります。社内でルールを統一しましょう)

労務費と同様に、機械にも歩掛が存在します。「コンクリート1m3打設するのにポンプ車が0.05日必要」といった形で、単位作業量あたりの機械の稼働時間を算出し、経費を計算します。

機械経費 = 機械歩掛 (日/単位) × 機械損料単価 (円/日)

ステップ5: 合計と諸経費の計上

最後の仕上げです。これまで計算してきた各費用を合計し、会社の利益となる諸経費を乗せて、最終的な単価を決定します。

5-1. 直接工事費の算出

ステップ2〜4で算出した「材料費」「労務費」「機械経費」を全て合計します。これが、その工事を施工するために直接的に必要となる費用、すなわち「直接工事費」です。

直接工事費 = 材料費計 + 労務費計 + 機械経費計

この直接工事費が、内訳明細書に記載される「単価」の基礎となります。

5-2. 間接工事費(諸経費)の考慮

工事の価格は、直接工事費だけでは成り立ちません。現場事務所の家賃や光熱費、現場監督の人件費(現場管理費)、本社の社員の給料や事務所の経費(一般管理費)など、工事を間接的に支える費用が必要です。これらを「間接工事費(諸経費)」と呼びます。

諸経費の算出方法は複雑ですが、一般的には直接工事費に対して一定の率(諸経費率)を掛けて算出します。

  • 公共工事の場合:国土交通省の積算基準で、工事の種類や規模に応じて諸経費率が詳細に定められています。
  • 民間工事の場合:明確な決まりはありません。過去の実績から自社の平均的な諸経費率を算出し、それを適用するのが一般的です。この率のさじ加減が、会社の利益を大きく左右します。

代価表の段階では、まず直接工事費を正確に算出することに集中します。そして、内訳書や見積書の最終段階で、この直接工事費の合計に諸経費を上乗せして、最終的な見積もり金額を算出するという流れになります。

4. 代価表作成の精度を上げる3つのコツ

基本的な代価表の作り方をマスターしたら、次はライバルと差をつけるための応用編です。以下の3つのコツを実践することで、代価表の精度は飛躍的に向上し、それは会社の利益と信頼に直結します。

💡精度向上の秘訣

  • コツ1:独自データの蓄積と活用 ― 「実行歩掛」という名の財産
  • コツ2:単価情報のアップデートを怠らない ― 生きた情報を掴む
  • コツ3:ダブルチェック体制の構築 ― ヒューマンエラーを防ぐ砦

コツ1:独自データの蓄積と活用 ― 「実行歩掛」という名の財産

前述の通り、積算の精度と利益を左右するのが「歩掛」です。国が定める標準歩掛はあくまで平均値であり、全ての現場に当てはまるわけではありません。

真に価値があるのは、自社の実績に基づいた「実行歩掛」です。工事が完了したら、必ず「実際にかかった人数と日数」を記録し、データとして蓄積しましょう。ベテラン職人の頭の中にしかないノウハウを、会社の共有財産として形式知化するのです。

  • 「この作業なら、うちのAチームは標準の8割の時間でできる」
  • 「この現場は搬入路が狭いから、標準より2割増しで見ておこう」

こうした実践的なデータが蓄積されれば、より現実に即した、競争力のある見積もりを作成できます。標準歩掛で積算して、実行歩掛で利益を出す。これが、勝ち残る建設業者の定石です。

コツ2:単価情報のアップデートを怠らない ― 生きた情報を掴む

建設資材の価格は、社会情勢や為替の変動などによって常に揺れ動いています。数ヶ月前の単価で見積もりを作成したら、受注したときには価格が上昇しており、利益が吹き飛んでしまった…という話は決して珍しくありません。

これを防ぐためには、単価情報を常に最新の状態に保つ努力が必要です。

  • 定期的な相見積もり:主要な資材については、四半期に一度など、定期的に仕入れ先から見積もりを取り直しましょう。
  • 業者との良好な関係構築:日頃から資材業者や専門工事業者とコミュニケーションを取り、「最近〇〇の値段が上がりそうだ」といった生きた情報をいち早くキャッチできる関係を築くことが重要です。
  • 情報サイトの活用:建設業界専門のニュースサイトや、経済情報サイトをチェックする習慣をつけ、価格変動のトレンドを把握しましょう。

古い海図では航海できないように、古い単価では利益は出せません。常に最新の情報にアンテナを張ることが、リスク管理の第一歩です。

コツ3:ダブルチェック体制の構築 ― ヒューマンエラーを防ぐ砦

どれだけ注意深く作業しても、人間である以上ミスは起こり得ます。特に、桁の打ち間違いや計算式の参照ミスは、大きな損失に直結する危険なエラーです。

これを防ぐためには、必ず第三者によるダブルチェックの体制を構築しましょう。

  • 担当者以外のチェック:作成者とは別の人が、図面や仕様書と照らし合わせながら、数量、単価、計算式に間違いがないかを確認します。
  • チェックリストの活用:「数量の拾い忘れはないか?」「最新の単価を使用しているか?」「ロス率は考慮されているか?」といったチェック項目をリスト化し、確認漏れを防ぎます。
  • 極端な数値の洗い出し:過去の同種工事の単価と比較して、極端に高い、あるいは安い項目がないかを確認します。異常値には、何らかのエラーが隠れている可能性があります。

「自分は大丈夫」という過信が、最も危険です。面倒でも、この一手間をかけることが、会社の信用と利益を守る最後の砦となります。

5. よくある質問 (Q&A)

ここでは、代価表の作り方に関して、多くの方が疑問に思う点についてQ&A形式でお答えします。

Q1. エクセルでの代価表作り方のテンプレートはありますか?
A1. インターネットで「代価表 テンプレート エクセル」などと検索すると、多くの無料テンプレートが見つかります。国土交通省のサイトなどでも、公共工事用の書式が公開されています。ただし、最も良いのは、本記事のステップ1で解説した項目を参考に、自社の業務フローに合ったオリジナルのテンプレートを作成することです。一度作ってしまえば、それが会社の標準となり、業務の効率化と標準化に大きく貢献します。
Q2. 歩掛の調べ方がよくわかりません。
A2. まずは、国土交通省が公表している「公共建築工事標準単価積算基準」や、関連書籍を参考にすることから始めましょう。これらは公共工事積算のバイブルであり、基本的な考え方を学ぶのに最適です。その上で、自社の工事完了報告書などから、「実際に何人で何日かかったか」を拾い出し、独自の「実行歩掛」データを作成・蓄積していくことが、他社との差別化に繋がります。
Q3. 民間工事の代価表の作り方で特に注意すべき点は?
A3. 民間工事は、公共工事のように定められた積算基準がないため、より自由度が高い反面、発注者への説明責任が重要になります。特に以下の2点に注意しましょう。
1. 根拠の明確化:なぜその単価なのか、なぜその歩掛なのかを、過去の実績や業者見積もりなどを基に、いつでも説明できるようにしておくことが重要です。
2. 諸経費の設定:自社の経営状況を正確に把握し、利益を確保できる適切な諸経費率を設定する必要があります。過去の工事の原価と利益を分析し、自社独自の基準を持つことが不可欠です。
Q4. 積算ソフトを導入するメリットは、具体的に何ですか?
A4. 積算ソフトの最大のメリットは、「業務の圧倒的な効率化」「属人化の排除」です。
・最新の単価や歩掛データが自動で更新されるため、調べる手間が省けます。
・計算ミスが起こりにくく、ダブルチェックの負担が軽減されます。
・過去の積算データを簡単に検索・流用できるため、類似案件の作成時間を大幅に短縮できます。
・誰が作業しても一定の品質を保てるため、ベテラン担当者の退職などのリスクに備えることができます。
初期投資はかかりますが、長期的に見れば人件費の削減や受注機会の増加に繋がり、十分に元が取れる可能性があります。

まとめ

本日は、中小規模の建設業者様に向けて、代価表の作り方を基礎から応用まで網羅的に解説してきました。

代価表は、単なる数字の羅列ではありません。それは、一つ一つの工事に込められた技術と汗の結晶であり、会社の未来を支える利益の設計図です。正確な代価表を作成するスキルは、どんぶり勘定という荒波から会社を守り、安定経営という港へと導くための、信頼できる羅針盤となります。

今回ご紹介した5つのステップと3つのコツを、ぜひ明日からの業務に活かしてみてください。

本日のまとめ

  • 1代価表は見積もりの心臓部。原価を可視化し、利益と信頼を生み出す。
  • 2作成前には図面、数量、単価、歩掛などの情報を完璧に準備する。
  • 3「構成決定→材料費→労務費→機械経費→合計」の5ステップで作成する。
  • 4特に「歩掛」の理解と活用が、労務費積算、ひいては見積もり全体の精度を左右する。
  • 5「自社データの蓄積」「単価の更新」「ダブルチェック」で精度をさらに高める。

最初は時間がかかり、難しく感じるかもしれません。しかし、この地道な作業の積み重ねが、数年後の会社の姿を大きく変えるはずです。まずは自社で使えるエクセルのテンプレート作成から始めてみてはいかがでしょうか。

この記事が、日々の業務に奮闘されている皆様の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。

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