【建設業経営者必見】売上計上基準を理解して、適切な経営判断を!
「今期の業績はどうなるだろう?」
建設業の経営者であれば、誰もが気に掛けるこの問い。しかし、その答えを左右する「売上計上基準」について、深く理解しているでしょうか?
売上計上基準は、単なる会計処理のルールではありません。会社の経営状況を正しく把握し、未来に向けた戦略を立てるための重要なカギとなるのです。
今回は、建設業における売上計上基準の基礎知識から、実務上の注意点、そして、よくある疑問まで、わかりやすく解説していきます。ぜひ最後まで読み進め、貴社の経営にお役立てください。
1.建設業における売上計上基準とは?
建設業は、他の業種と比べて、工事期間が長期にわたるという特徴があります。そのため、売上計上基準も、一般的な販売業とは異なる点があります。
建設業で主に用いられる売上計上基準は、「工事進行基準」と「完成基準」の二つです。
1-1. 工事進行基準
「工事進行基準」とは、工事が完成するまでに、既に行われた工事の進捗度合いに応じて、売上を計上していく方法です。
例えば、1億円規模の工事を1年間かけて行う場合、工事開始から半年が経過し、全体の50%の工事が完了していれば、その時点で5,000万円の売上を計上します。
この基準は、工事の進捗状況をタイムリーに反映できるため、より正確な経営状況を把握できるというメリットがあります。
1-2. 完成基準
一方、「完成基準」は、工事がすべて完了した時点で、一括して売上を計上する方法です。
先ほどの例で言えば、1年間の工事がすべて完了した時点で、1億円の売上を計上します。
完成基準は、売上計上が簡便であるというメリットがある一方、工事期間が長期化するほど、実際の経営状況との間にタイムラグが生じてしまうというデメリットもあります。
2.どちらの基準を採用すべき?
では、自社ではどちらの売上計上基準を採用すべきでしょうか?
結論から言うと、以下のいずれかに該当する場合は、「工事進行基準」を採用することが義務付けられています。
- 工事期間が1年を超える場合
- 工事収益が総収益の10%を超える場合
上記に当てはまらない場合でも、「工事進行基準」を採用することが適切なケースもあります。
例えば、以下のようなケースです。
- 工事の進捗状況をタイムリーに把握し、適切な経営判断を行いたい場合
- 金融機関からの融資を受ける際に、より正確な経営状況を提示したい場合
一方、「完成基準」は、以下のようなケースで採用されることがあります。
- 工事期間が短期間で、工事進捗の把握が容易な場合
- 売上計上の事務処理を簡素化したい場合
いずれにしても、自社の状況に合わせて、適切な基準を選択することが重要です。
3.工事進行基準の導入・運用における注意点
工事進行基準を導入・運用する際には、以下の点に注意する必要があります。
3-1. 工事進捗度の把握
工事進行基準を適用する上で最も重要なのが、「工事進捗度」を正確に把握することです。工事進捗度は、以下のいずれかの方法で計算します。
- 原価比例法:発生した原価の割合によって進捗度を測る方法
- 数量比例法:工事の出来高の割合によって進捗度を測る方法
いずれの方法で計算する場合でも、客観的な根拠に基づいて、適正な進捗度を算出する必要があります。
3-2. 適切な書類作成と保管
工事進捗度を裏付けるための、適切な書類を作成・保管しておく必要があります。具体的には、以下の様な書類が挙げられます。
- 工事請負契約書
- 工事原価計算書
- 工事写真
- 出来高確認書
これらの書類は、税務調査の際にも確認されるため、適切に管理する必要があります。
4.まとめ
今回は、建設業における売上計上基準について解説しました。売上計上基準は、会社の経営状況を左右する重要な要素です。本稿を参考に、自社の状況に最適な基準を採用し、適切な経営判断を行ってください。
また、売上計上基準は、税務上も非常に重要な論点となります。専門家である税理士に相談しながら、進めていくことをお勧めします。
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