建設業界で日々奮闘されている経営者様、現場監督様、そして積算・見積もりを担当されている皆様。日々の業務、本当にお疲れ様です。

さて、突然ですが、「代価表」と「単価表」この二つの書類の違いを、明確に説明できるでしょうか?

「どちらも工事費を計算するためのものでしょ?」「なんとなくは分かるけど、厳密な違いは…」と感じる方も少なくないかもしれません。建設業における積算・見積もり業務は、会社の利益を直接左右する、いわば経営の心臓部。この心臓部を動かす重要なパーツが、まさに「代価表」と「単価表」なのです。

もし、これらの違いを曖昧なままにしていると、知らず知らずのうちに見積もり精度が低下し、「受注はできているのに、なぜか利益が残らない…」といった事態を招きかねません。それは 마치、航海図の読み方を間違えたまま、大海原へ漕ぎ出す船のようなもの。目的地である「適正な利益」にたどり着くことは困難になってしまいます。

この記事では、そんな建設業界の根幹を支える「代価表」と「単価表」の違いに焦点を当て、中小規模の建設業者様が明日から実務に活かせるよう、以下の内容を徹底的に、そして分かりやすく解説していきます。

長年の経験で培った「勘」ももちろん大切ですが、その勘を裏付ける「論理」と「根拠」を持つことで、御社の見積もりはより強固なものになります。この記事が、その一助となれば幸いです。それでは、さっそく「代価表」と「単価表」の違いの核心に迫っていきましょう。

【結論】一目でわかる!代価表と単価表の決定的な違いとは?

本題に入る前に、まずは結論から。代価表と単価表の違いを、できるだけシンプルに理解しましょう。もし、この二つを料理に例えるならば、こうなります。

  • 単価表 まるで「食材の値段表」。ニンジン1本100円、豚肉100g 200円といった、個々の材料やサービスの値段がリスト化されたもの。
  • 代価表 まるで「カレーライスのレシピ兼コスト表」。カレー1皿作るのに、ニンジン0.5本(50円)、豚肉50g(100円)、調理の手間賃(300円)が掛かる、というように、一つの作業(料理)を完成させるための内訳と合計金額を示したもの。

つまり、単価表は「部品」の価格リストであり、代価表はそれらの部品を組み合わせて作る「組立品(=一つの作業)」の価格リストなのです。このイメージを頭に置いていただくと、この後の詳しい解説がスムーズに理解できるはずです。

それでは、それぞれの特徴を比較表でさらに明確に見てみましょう。

項目 単価表 代価表
目的 材料・労務・機械など、積算の最小単位の価格を管理する 特定の作業(工種)1単位を施工するための複合的な費用を算出する
構成要素 材料名、規格、単位、単価(例:異形鉄筋 SD295 D13、t、〇〇円) 工種名、規格、単位、材料費、労務費、機械経費、諸経費などの内訳
計算の粒度 「点」のイメージ。個々のアイテムの価格。 「線」のイメージ。複数の点を繋いで一つの作業の価格を形成。
重要な概念 市場価格、見積価格、仕入価格 歩掛(ぶがかり)
具体例 普通ポルトランドセメント 25kg/袋:〇〇円
普通作業員:〇〇円/日
コンクリート打設 1㎥あたり:〇〇円
(セメント、砂、砂利、作業員、ミキサー車などの費用を合算)
別名・通称 材料単価表、労務単価表 複合単価表、 составной単価表

いかがでしょうか。この表をご覧いただくだけで、「代価表」と「単価表」の違いがかなり明確になったのではないでしょうか。単価表が積算の基礎となる「辞書」だとすれば、代価表はその辞書を使って文章(=見積もり)を組み立てるための「定型文・イディオム集」のような存在と言えるかもしれません。


【深掘り解説】単価表とは? – 積算の基礎となる部品リスト

さて、ここからはそれぞれの書類について、さらに深く掘り下げていきましょう。まずは、すべての積算の土台となる「単価表」です。

単価表とは、前述の通り、工事を構成する最小単位の要素、すなわち「材料」「労務」「機械」それぞれの単価を一覧にしたものです。この単価表の精度が、最終的な見積金額の精度を決定づけると言っても過言ではありません。まさに、建物の基礎がしっかりしていなければ上物が傾いてしまうのと同じ理屈です。

単価表を構成する3つの要素

単価表は、主に以下の3種類の単価で構成されます。

  1. 材料単価
    セメント、骨材、鉄筋、木材、塗料など、工事に使用するあらゆる資材の単価です。価格は「kgあたり」「㎥あたり」「本あたり」といった単位で設定されます。資材の価格は市況によって常に変動するため、定期的な見直しが不可欠です。
  2. 労務単価
    普通作業員、型枠工、鉄筋工、塗装工など、工事に従事する職人さんの賃金です。「1日あたり(人/日)」で設定されるのが一般的です。公共工事では「公共工事設計労務単価」が基準となりますが、民間工事では地域や職種、季節による需要の変動も考慮する必要があります。
  3. 機械単価
    バックホウやクレーン、ダンプトラックといった建設機械の使用料です。自社で保有しているか、リースするかによって計上方法は異なりますが、「1日あたり」「1時間あたり」の損料として単価を設定します。燃料費やオペレーターの労務費を含む場合と含まない場合があります。

その単価、どこから持ってくる?単価の種類

では、これらの単価はどのように決定すればよいのでしょうか。単価の出所にはいくつかの種類があります。

主な単価の種類

  • 市場単価
    (財)建設物価調査会が発行する「建設物価」や(一財)経済調査会が発行する「積算資料」などに掲載されている、全国の主要都市における資材の市中取引価格です。公共工事の積算で広く用いられますが、実際の購入価格とは乖離がある場合もあります。
  • 見積単価
    特定の資材や専門工事について、実際にメーカーや協力会社から見積もりを取得した価格です。特殊な材料や大量購入する場合など、市場単価がない、あるいは実態と合わない場合に採用します。最も実態に近い価格と言えます。
  • 決定単価(社内単価)
    過去の実績や取引先との関係性に基づき、自社で独自に設定する単価です。継続的に取引のある資材などについて、社内で基準価格を設けておくことで、見積もり作成のスピードアップに繋がります。

実践!単価表の作成と管理のポイント

中小規模の建設業者様にとって、精度の高い単価表を維持・管理することは、時に大きな負担となるかもしれません。しかし、ここを疎かにしてはなりません。以下のポイントを意識してみてください。

ポイント1:定期的な更新を怠らない
資材価格や労務費は常に変動しています。特に昨今の世界情勢を鑑みれば、価格変動は日常茶飯事です。「去年の単価で…」という油断が、大きな損失に繋がることも。少なくとも四半期に一度、主要な資材だけでも価格をチェックする習慣をつけましょう。

ポイント2:仕入先との良好な関係を築く
日頃から複数の仕入先と良好な関係を築き、最新の価格情報を入手しやすい環境を整えておくことが重要です。単に安さだけを求めるのではなく、安定供給や情報提供といった付加価値も含めて、信頼できるパートナーを見つけることが、結果的にコスト管理に繋がります。

ポイント3:Excelやソフトを活用する
手書きのノートで管理するのも悪くありませんが、Excelなどの表計算ソフトを使えば、検索や並べ替え、自動計算が容易になり、格段に効率が上がります。最近では、クラウド型の積算見積ソフトも増えており、物価資料と連動して自動で単価を更新してくれるサービスもあります。初期投資はかかりますが、長期的に見れば人件費の削減や精度の向上に大きく貢献するでしょう。

【単価表の具体例(一部抜粋)】

分類 品名・規格 単位 単価 備考(調査日など)
材料 普通ポルトランドセメント N t 15,000円 2023年10月 Aセメント商会見積
材料 異形鉄筋 SD295 D13 t 95,000円 建設物価 2023年11月号
労務 普通作業員 18,000円 公共工事設計労務単価参考 社内決定単価
労務 型枠工 23,000円 公共工事設計労務単価参考 社内決定単価
機械 バックホウ(クローラ型)山積0.8㎥ 35,000円 B建機リース 見積


【深掘り解説】代価表とは? – 精緻な見積もりを支える組立品リスト

単価表が積算の「基礎」であるならば、次にご紹介する「代価表」は、その基礎の上に築かれる「骨格」であり、より実務的な見積もりを作成するための強力なツールです。

代価表とは、ある特定の作業(工種)を1単位仕上げるために必要な費用の内訳をまとめた表です。例えば、「コンクリートを1㎥打設する」「壁紙を1㎡貼る」「足場を1㎡組み立てる」といった作業単位で作成されます。この「作業単位の合計金額」のことを複合単価と呼びます。

なぜ代価表が必要なのか?単価表だけでは不十分な理由

「単価表があるなら、それを使って計算すればいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、実際の工事はそんなに単純ではありません。

例えば、「コンクリートを1㎥打設する」という作業を考えてみてください。この作業には、

  • セメント、砂、砂利、水といった材料
  • コンクリートを練り、運び、均す職人さん(労務)
  • ミキサー車、ポンプ車、バイブレーターといった機械

が必要になります。これら全ての要素を、見積もりのたびに一つ一つ拾い出して計算するのは、非常に手間がかかり、計算ミスの原因にもなります。

そこで代価表の出番です。あらかじめ「コンクリート打設 1㎥あたり」というパッケージの価格表を作っておけば、あとは必要な数量(例えば50㎥)を掛けるだけで、その工事項目にかかる費用を素早く正確に算出できるのです。これは、業務効率を劇的に改善します。

代価表の核心!「歩掛(ぶがかり)」を制する者が積算を制す

代価表を作成する上で、避けては通れない、そして最も重要な概念が「歩掛(ぶがかり)」です。

Q. 歩掛(ぶがかり)とは何ですか?

A. 歩掛とは、ある一定の作業単位(例:1㎥、1㎡、1m)を仕上げるために、標準的に必要とされる作業手間(職人の人数×時間)、材料の数量、機械の運転時間などを数値で示したものです。

いわば、作業の「効率」や「生産性」を数値化したものであり、代価表の「レシピ」の中核をなす部分です。この歩掛が正確でなければ、どんなに単価が正しくても、出来上がる代価表は現実離れしたものになってしまいます。

例えば、「普通コンクリート(設計基準強度24N/mm²)1㎥あたり」の歩掛は、以下のように設定されます。(※数値はあくまで一例です)

  • 普通ポルトランドセメント:0.3t
  • 砂:0.7㎥
  • 砂利:0.9㎥
  • 普通作業員:0.3人
  • コンクリートミキサー(0.2㎥):0.2時間

この歩掛に、先ほどの単価表の各単価を掛け合わせることで、代価表が完成します。

実践!代価表の作成フロー

では、実際に代価表を作成する流れをステップで見ていきましょう。

代価表作成の4ステップ

  1. 作業項目(工種)の選定
    まず、どの作業の代価表を作るかを決めます。「型枠組立 1㎡あたり」「鉄筋加工組立 1tあたり」など、見積もりで頻繁に登場する作業項目を選びましょう。
  2. 歩掛の調査・設定
    次に、その作業の歩掛を調べます。国土交通省が公表している「公共建築工事標準単価積算基準」や各種積算資料が参考になります。また、最も重要なのは自社の過去の実績データです。実際の現場でどれくらいの材料と手間がかかったかを記録・分析し、自社独自の標準歩掛を設定することが、見積もり精度向上の鍵となります。
  3. 単価の引用
    歩掛で設定された各項目(材料、労務、機械)の単価を、自社の単価表から引用します。この時、単価表が最新の状態に保たれていることが大前提です。
  4. 費用算出と合計
    「歩掛(数量) × 単価」で、各項目の費用を算出します。そして、それらをすべて合計したものが、その作業の「複合単価」となります。これが代価表の完成形です。

【代価表の具体例:コンクリート打設 1㎥あたり】

上記の歩掛と単価表の例を使って、実際に代価表を作成してみましょう。

工種名:コンクリート打設(調合:24-18-20N) 単位:㎥
種別 名称 規格 歩掛(数量) 単価 金額(歩掛×単価)
材料費 セメント 普通N 0.32 t 15,000 円/t 4,800 円
0.7 ㎥ 4,000 円/㎥ 2,800 円
砂利 0.9 ㎥ 4,500 円/㎥ 4,050 円
労務費 普通作業員 0.3 人 18,000 円/日 5,400 円
機械経費 ミキサー車 4t 0.2 時間 8,000 円/時間 1,600 円
複合単価(合計) 18,650 円

このように、「コンクリート打設 1㎥あたり 18,650円」という複合単価が算出されました。これにより、例えば10㎥のコンクリート打設が必要な場合、18,650円 × 10㎥ = 186,500円 と、瞬時に直接工事費を計算できるわけです。


代価表と単価表の使い分けと連携 – 実務での活用シーン

さて、代価表と単価表、それぞれの役割と違いをご理解いただけたところで、次は実務において、これらをどのように使い分け、連携させていくべきかを見ていきましょう。

これらは決して独立したものではなく、相互に連携し合うことで、その真価を発揮します。単価表という無数の「点」の情報を、代価表という「線」で結びつけ、最終的に見積書や実行予算という「面」を構築していく。そんなイメージです。

こんな時は「単価表」が主役!

単価表は、よりミクロな視点でコストを把握したい場合に活躍します。

🔍単価表の主な活用シーン

  • 1小規模な修繕・補修工事の見積もり
    「ドアノブを1個交換する」「タイルを数枚貼り替える」といった、作業の手間が少なく、材料費が費用の大部分を占めるような工事では、代価表を作成するまでもなく、単価表の材料単価に少しの手間賃を加えて見積もる方がスピーディーです。
  • 2原価管理・仕入価格の交渉
    定期的に単価表をチェックすることで、「最近、鉄筋の価格が上がっているな」「この資材はA社よりB社の方が安いな」といった価格変動を敏感に察知できます。これは、実行予算と実績を比較する原価管理や、仕入先との価格交渉において非常に強力な武器となります。
  • 3VE(バリューエンジニアリング)提案
    施主に対してコストダウンの提案(VE提案)を行う際にも、単価表は役立ちます。「この仕上げ材を、品質は同等で単価の安いこちらの材料に変更すれば、〇〇円のコストダウンが可能です」といった具体的な提案が可能になります。

こんな時は「代価表」が主役!

一方、代価表は、複数の要素が絡み合う、よりマクロな視点で工事費を捉える場合に不可欠です。

📄代価表の主な活用シーン

  • 公共工事や大規模工事の見積もり・入札
    公共工事の入札では、内訳書に代価表の添付を求められるケースがほとんどです。また、新築工事や大規模な改修工事など、工種が多岐にわたる複雑な工事では、代価表を用いることで、積算の精度と効率を飛躍的に高めることができます。
  • 実行予算の作成
    受注後に作成する実行予算は、現場の利益を管理するための羅針盤です。見積もり時に作成した代価表をベースに、より現実に即した単価や歩掛に見直して実行予算用の代価表を作成することで、精度の高い予算管理が可能になります。
  • 標準化による業務効率の向上
    よく行う工事の代価表を社内で標準化・テンプレート化しておくことで、積算担当者のスキルに依存しない、安定的でスピーディーな見積もり作成体制を構築できます。若手社員への技術伝承という側面でも非常に有効です。

このように、代価表と単価表の違いを理解し、案件の規模や目的に応じて適切に使い分けることが、賢い建設業経営の第一歩と言えるでしょう。


【実践編】代価表・単価表作成のよくある課題と解決策

ここまで代価表と単価表の重要性についてお話してきましたが、理論は分かっていても、実践となると様々な壁にぶつかるのが現実です。特に、人員が限られる中小規模の建設業者様にとっては、悩ましい問題も多いことでしょう。

ここでは、よくあるお悩みと、その解決策のヒントをQ&A形式でご紹介します。

課題1:資材価格の変動が激しく、単価の更新が追いつきません。

解決策:全ての品目を完璧に追うのは不可能です。まずは、工事金額に与える影響が大きい主要な資材(鉄筋、生コン、木材など)に絞って、重点的に価格をチェックしましょう。月に一度、特定の日に価格調査を行うなど、業務をルーティン化するのがおすすめです。また、複数の仕入先から定期的に相見積もりを取る体制を整えたり、価格情報を提供してくれる建材ECサイトなどを活用するのも有効です。全てを人力でやろうとせず、ツールの力も借りましょう。

課題2:自社に合った適切な歩掛が分からず、いつもどんぶり勘定になってしまいます。

解決策:最初から完璧な歩掛を目指す必要はありません。まずは、国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」や市販の積算資料をベースにしてみましょう。そして、それ以上に重要なのが、自社の工事実績をデータとして蓄積することです。工事が完了したら、「実際に職人は何人日かかったか」「材料のロスはどれくらい出たか」といった情報を日報や完了報告書に記録し、それを分析して自社の標準歩掛を少しずつアップデートしていくのです。この地道な作業が、数年後、会社の大きな財産になります。

課題3:代価表や単価表の作成に時間がかかりすぎて、他の業務を圧迫しています。

解決策:「標準化」と「IT化」がキーワードです。毎回ゼロから作成するのではなく、頻度の高い工事の代価表は一度しっかり作り込み、テンプレートとして保存しておきましょう。Excelでも構いませんし、積算見積ソフトを導入すれば、さらに効率は上がります。最近のソフトは、過去の見積もりデータを流用したり、単価を一括で更新したりする機能が充実しており、作成時間を大幅に短縮できます。無料トライアルなどを利用して、自社に合うソフトを探してみるのも一つの手です。

大切なのは、いきなり100点を目指すのではなく、できることから少しずつ改善していく姿勢です。小さな改善の積み重ねが、やがて大きな業務効率化と利益率の向上に繋がっていきます。


代価表・単価表の精度が会社の利益を左右する、本当の理由

これまで、「代価表」と「単価表」の違いや作成方法について詳しく見てきましたが、最後に、なぜこれらの書類の精度にこだわるべきなのか、その本質的な理由についてお話しさせてください。

それは、精度の高い見積もりこそが、企業の「稼ぐ力」そのものだからです。

もし、あなたの会社の見積もりが、古い単価や曖昧な歩掛に基づいた「どんぶり勘定」だとしたら、どのようなリスクがあるでしょうか?

  • 安すぎる見積もり:受注はできるかもしれません。しかし、いざ工事を始めてみると、想定以上に原価がかかり、最終的には赤字に…。社員が汗水流して働いても、会社には利益が残らないという最悪の事態に陥ります。
  • 高すぎる見積もり:安全を見て費用を多めに盛り込んだ結果、競合他社に価格で負け、失注が続いてしまう。これでは、会社の売上そのものが立ちません。

まさに、暗闇の中を手探りで進むような経営です。これでは、持続的な成長は望めません。

一方で、精度の高い単価表と代価表に裏付けられた見積もりは、会社に何をもたらすでしょうか?

高精度な見積もりがもたらすメリット

  • 適正な利益の確保:必要な原価と経費を正確に把握し、そこに確保したい利益を上乗せすることで、根拠のある価格設定が可能になります。これにより、「忙しいだけで儲からない」という状況から脱却できます。
  • 顧客からの信頼獲得:「なぜこの金額になるのか」を内訳書や代価表をもって論理的に説明できれば、顧客は価格に納得し、会社への信頼を深めてくれます。価格競争に巻き込まれず、「価値」で選ばれる会社になるための第一歩です。
  • 的確な経営判断:精度の高い見積もりは、そのまま精度の高い実行予算に繋がり、正確な原価管理を可能にします。どの工事でどれくらいの利益が出ているのかが明確になれば、得意分野を伸ばしたり、不採算部門を見直したりといった、的確な経営判断が下せるようになります。

代価表や単価表の作成は、単なる事務作業ではありません。それは、自社の技術力と管理能力を金額という共通言語に翻訳し、顧客と、そして社会と対話するための、極めて重要な経営活動なのです。

まとめ:明日から始める、見積もり精度向上の第一歩

今回は、「代価表」と「単価表」の違いをテーマに、それぞれの役割から実践的な活用法まで、詳しく解説してきました。

長い内容になりましたので、最後に重要なポイントをもう一度振り返りましょう。

📝本日のまとめ

  • 1単価表は「部品」の価格リスト:材料・労務・機械といった、工事を構成する最小単位の価格を管理する。
  • 2代価表は「組立品」の価格リスト:特定の作業1単位を仕上げるための費用内訳を示したもので、「歩掛」が核心。
  • 3両者の違いの理解が重要:単価表の精度が代価表の精度を決め、代価表の活用が見積もり全体の精度と効率を左右する。
  • 4精度は利益に直結:精度の高い見積もりは、適正利益の確保、顧客からの信頼獲得、的確な経営判断の基盤となる。

建設業界を取り巻く環境は、資材の高騰や人手不足など、決して楽観できるものではありません。このような時代だからこそ、自社の足元を固め、一つ一つの工事から確実に利益を生み出していく力が求められます。

そのための第一歩として、まずは御社の「単価表」を見直してみてはいかがでしょうか。主要な資材の単価は、最後にいつ更新されたものになっていますか?そして、最も頻繁に行う工事の「代価表」を作成し、社内で標準化してみることから始めてみませんか?

この記事が、御社の「稼ぐ力」を強化し、未来への確かな一歩を踏み出すきっかけとなれば、これに勝る喜びはありません。